【HOTEL星取テラスせきがね】現代の名工である総料理長に、開業に向けて思いをインタビューしました♪

HOTEL星取テラスせきがねが、本年4月26日に開業します。

今回は、開業に向けての思いを総料理長の岩本栄二に聞いてみました

子どもの頃から料理人を志す

どうして料理人になろうと思ったのですか?

祖父・父が和食の料理職人という家庭で育ったので、料理人になると決めていました。父が「むきもの」の家元だったので、訪ねて来られるお客様や、「むきもの」のお弟子さんなど、生まれてからずっと料理に携わる人ばかりの環境にいました。

そんな中で育ったので、私も料理人をやってみたいと思い、料理人を志しました。

昔から料理を作るのが好きで、子どもの時から家でチャーハンなどを作っていました。

注)むきもの=日本料理の技法のひとつで、野菜などに包丁を入れて模様や彫刻をする技術。岩本栄二はその流派の「心刀流」の三代目。

料理人としての修行は?

私が、「料理人になる!」と、父に告げた時、「料理人になるならこの人のもとで修業をしてこい」と、愛知県の職人さんを紹介されました。

心刀流の家元だった父のもとへ、「むきもの」を学びたいと全国から職人さんが集まって来られました。その中に非常に腕の立つ職人さんがおられ、もし息子が料理人を目指すなら、息子の修行の師匠になってほしいと父が思っていた人です。

30歳になるまで、その師匠や師匠が育てた職人さんたちのもとで修行し、しっかり勉強させていただきました。

修業は料理だけにとどまらず、先輩として後輩にどう接するのか、師匠のまわりの料理人さんとどう付き合うのか、料理組合のお偉いさん方とどうお付き合いをするのか、など…、職人としてのノウハウを徹底的に教えていただきました。

料理人として鳥取に戻る

愛知県での修行の後は?

30歳になった頃、父が旅館を一軒まかされており、料理人として戻ってきてほしいと呼び戻され、父と二人で料理人として仕事をすることになりました。

どんな旅館だったのですか?

三朝温泉にある、ゴルフ場が経営する小さな料理旅館でした。

その後、ゴルフ場が旅館を手放すことになったので、三朝温泉から東郷温泉の旅館に料理長として転職しました。
それを機に、年齢もあり父は料理人を引退しました。

その温泉旅館には43歳まで勤め、その後鳥取市内の料理屋さんで仕事をしました。

その料理屋さんが東京に店を出すことになり、「東京に行かないか」と、誘っていただきました。

50歳を過ぎており、高齢の両親を鳥取に置いて東京に行くことに悩んでいた時、流通とご縁があり、HOTEL星取テラスせきがねの総料理長としてお仕事をすることになりました。

「むきもの」は技術と想像力

むきもの始めたきっかけは?

「むきもの」は、料理人になると必要な技法です。
日本料理を学び始める時に、「桂むき」などの基本の技法を学びますが、それ以上に、心刀流はかなり複雑な技術が必要です。

それらを取得しようと思えば、若いうちから始めて仕事の休憩時間なども練習するなど、地道な練習をかかせません。ちょっと見ただけでマネできる技術ではないのです。師匠について、切り方や包丁の入れ方などをきちんと学ばないといけません。

基本を習得出来たら、後は自分の想像力を働かせて自分の作品を仕上げていくのです。
つまり、基本は学びますが、決まりがないのです。

例えば、「大黒さん」を作る基本的な技術は教えてもらえますが、大黒さんに動きをつけるのは、自分の想像力です。

竿を持って釣りをしている恵比寿さんは、自分の想像力で完成しました。

自分の納得できる作品はいつできたのですか?

三代目を襲名したころですね。
それまでは二代目に作品を見てもらい、手直しを受けていました。襲名した頃には、手直しの量も減りましたね。

野菜に彫るのですか?

初代の師匠は、野菜の一刀彫りでした。

野菜のむきものは、県外の展示会に作品を持っていくと、どうしても傷んでしまいます。父が二代目を襲名し、この野菜にかわるものを探していたところ、高野豆腐にいきつきました。
高野豆腐でいろいろなものを作ったところ、湿気には弱いが野菜に比べて長持ちする。何年も彫った形を維持でき、野菜に比べて見た目も珍しい。
こんな理由で高野豆腐のむきものが定着していき、私が引き継いで三代目となります。

むきものは次世代に引き継いでいくのですか?

今は難しい時代になりましたね。

料理人世界も人材不足が言われており、現在、料理人が修行の時間をさける職場環境ではなくなってきています。
職人の数も減ってきており、料理をしながらむきものの研究する余裕がなくなっているのが現状です。

そうはいっても、興味を持っている方もおられ、県外から連絡をいただきます。その方々と交流を続けることで、この技術は引き継いでいきたいですね。

関金を「上質の温泉」と「美味しい料理が食べられる」場所に

食材の魅力として、鳥取はどうですか?

鳥取は、美味しいものがたくさんあります。
食材の中でも、海鮮が新鮮で良いものがたくさんあります。海鮮だけではなく、牛肉・豚肉・鶏肉も地元に美味しいものが揃っています。

関金エリアには渓流がありイワナなどの川魚がおり、大山そばやわさびも有名です。

いろいろな食材が新鮮な状態で手に入る。そこが鳥取の魅力だと感じています。

鳥取はカニが有名ですね

カニだけではなく、鳥取の海鮮は四季によっていろいろな食材が手に入ります。カニが終わると、シロイカと岩ガキ。それが終わると底引き網漁が始まり、のどぐろなどが揚がる・・・。

高級魚が多いですね

いわゆる高級魚も多いのですが、地元で獲れた海鮮は都会ほど高くはないんですよ。新鮮な海鮮がたくさんリーズナブルに手に入るのが魅力ですね。
海の幸だけでなく、山の幸どれも手に入りやすい恵まれた環境です。

関金はずばりどんなところですか?

現在は、何もないところです。でも、だからこそ面白い。

でも、ホテルを開業することによって、「上質の温泉が湧き出て、美味しいものが食べられる場所」と、多くの人に認識してもらうことで、人が集まる場所になっていってほしいですね。

昔、まだ汽車が走っていた頃は、何軒も温泉旅館があり栄えていました。廃線になり、関金地区に元気がなくなりました。近々バイパスも開通する予定なので、さらに足が向くのではないかと期待しています。

「HOTEL星取テラスせきがね」について

ホテルの外観(イメージ図)

このホテルの魅力は何だと思いますか?

ペットも泊まれるし、障がいがある方や介助が必要な方も来られる。本当にあらゆる方が利用しやすいホテルです。

静かな場所なので、都会の喧騒に囲まれて暮らしている方にとっては、澄んだ空気やきれいな水がある、この自然に囲まれた静かな場所でリフレッシュできるのではないでしょうか。連泊して湯治などにもご利用いただけますよ。

準備室でどんなお仕事をしているのですか?

メニューの作成や料理の準備はもちろん、調理場の道具を揃えたり、不備品がないか確認作業を行っています。

食材の仕入れについても、鳥取産の食材をしっかり目利きした上で、その食材の味をさらに引き出すひと仕事を加えて、ゲストの皆さまに感動と喜びを提供する。その準備を進めています。

料理人として、新しくオープンするホテルでしたいことはありますか?

関金まで来ていただくので、大山の美味しい黒牛など、地元の美味しい食材を楽しんでもらいたいですね。
鳥取県にはいろいろなブランド牛があるんですが、その中でも大山の黒牛は有名です。ぜひ食べてもらいたいですね。

星取テラスせきがねでは、地元の野菜を使った会席料理を提供する予定です

厚生労働省が発表した2022年度の卓越した技能者「現代の名工」にも選ばれました。料理人としてのこれからの目標は?

現代の名工に選んでいただきましたが、自分としてはまだまだ料理を極めていません。

私が料理人として修業を始めた時から今まで、和食の基本は変わりません。でも、和食の見た目や器は時代とともに変化しています。
今を終着点にしてしまうとだんだん古臭くなってしまいます。時代にあった料理を常に考え続けて作ってかなければならないと思っています。
自分が引退するまで、常に進化していかなければなりません。
これからも勉強続け、新しい料理にチャレンジしたいですね。さらに良いものを作れる料理人を目指しています。

HOTEL星取テラスせきがねでは、どんなチャレンジになるのでしょう?

今までは、お店や旅館の決まったレールの上で、そこからずれないように心がけて仕事をしてきました。

今回はゼロスタートです。会社からも作りたい料理を作ってくださいと言われています。自分がやりたいことができるので、開業が楽しみです。

流通という会社について

流通の社員になっているのですね?

流通の社員として入社させていただいています。

実際、こちらで料理人の仕事を始めるまでに、現場のスタッフさんたちと仕事をする機会がありました。

ずっと料理ばかりやってきた私にとっては、今まで経験したことがない様々なお仕事をさせていただいて、とても貴重な経験になりました。
現場でのお仕事は、私にはとても楽しく会社に感謝しています。
料理人としても勉強になりました。

スタッフの皆さんは良い人ばかりで、毎日楽しくお仕事をしています。流通という、とても良い会社に入社できました。

流通の会社についてどう思いますか?

鳥取で暮らしているので、会社としての流通は以前から知っていました。

流通のバスが走っているし、イベントでは流通の看板を見ていたので、バスやイベントの事業をしている会社だと思っていました。
でも実際入社して、現場の仕事させていただいて、いろいろな仕事をしているのだと驚きました。
今回、旅館業も始めるので、さらに驚いているところです。

総料理長のひそかな楽しみ

愛知県で仕事を教えてもらった職人さんの一人に、渓流釣りを趣味にしている人がいました。

愛知県で修行を始めたころの私は、特に趣味もなく暇ができるとパチンコにでかけていました。それを見かねて、その職人さんが「渓流釣りに連れて行ってやる」と長野まで連れ出してくれたのです。

いざ行ってみると、景色や水の美しさに目を奪われ、それよりなにより釣った魚を食べた時の美味しさに衝撃を受けました。

川魚はそんなに美味しいものではないと思い込んでいましたが、実際に自分で釣った渓流魚を始めて食べた時の美味しさが忘れられませんでした!
それからパチンコはやめて、そちらに使っていたお金を釣り道具に使うようになり、ひんぱんに釣りに出かけるようになりました。

渓流釣りは、新鮮な魚を塩焼きで食べるのが一番おいしい。

ホテルのお客様にも渓流で釣った魚を刺身や塩焼きで食べてもらいたいですね。
ヤマメやイワナは鮭や鱒系の魚なので、日本人の口に合っていると思います。新鮮な状態で食べてもらい、山の幸でもこんな美味しいものがあることを知ってもらいたいです。

ホテルの近くにも渓流があるので、仕事に余裕ができたら、そこで釣って食べてみたいと考えているところです。

(終)

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